久しぶりのツーショ
若手俳優とツーショを撮ってきた。
ここ最近の私は、ずっともやもやとした気持ちを抱えていた。今年27歳になる私には彼氏がいない、仕事もうまくいっていない、何よりも優先したいほどの趣味もない、家族ともなんとなく疎遠、なにか違うと思いつつ平成最後の夏を何となく過ごしていた。
占いにいった。もやもやを解消したくて。
占い師は「仕事ですね。貴方の仕事で満たされない気持ちは、恋愛でも趣味でも満たされません。仕事を変えて下さい。」そう言われた。
仕事は確かにうまくいっていない。暇。とにかく暇。周りからの評価が高いことは査定や上司からの信頼でよく分かるが、物足りない仕事。午前中で余裕で終わる仕事をするために毎日休憩時間も含めて8.5時間も拘束されることに耐えられない。もうすぐ27歳になるという年齢に焦りを感じているのに、毎日時間を無駄にしているとしか思えず苦しい。何とか自分で成長しようと、資格取得に取り組んだりもした。試験勉強中は満足できたけれど、試験が終わり合格証書が届いてから空虚な自分に気付いてさらに苦しくなった。なんのために勉強をしたのか、なんのために会社にただ通っているのか分からなかった。
彼氏がほしくて街コンにも合コンにも行った。好きな人ができたらつまらない日常が変わると思ったし、彼氏ができて結婚できるかもしれないという可能性ができたら退屈な仕事も耐えられるんじゃないかと思った。結果的には今も彼氏はいない。
実家とも自然と距離を置くようになった。実家の居心地がなんとなく悪くなって、結婚の気配もない自分がなんとなく後ろめたくて。子供のころに思い描いていた大人の女性とは、かけ離れた現実の自分の姿に嫌気がさす毎日だった。
そんな時に若手俳優とツーショすることになった。
数年前まで若手俳優オタクを嗜んでいたが、担降りしてからはあまり舞台に足を運ぶこともなくなっていた。今回は元推しが一度だけ共演したことがある某若手俳優とのツーショに友人に誘われたので行ってみた。そして気づいた。
これだ。
イケメンを目にした瞬間、心が変な音を立てて自分が自分じゃなくなることが分かった。これだ。この感覚。忘れていたこの感覚。まって~~~顔がいい。顔がいいだけで世界が輝く。「仕事で満たされない気持ちは仕事で満たせ」???はあ???顔がいいイケメンと同じ空間にいるだけでこんなにも心が躍るなんて。踊ってた。サタデーナイトフィーバーしてた。最高すぎ。仕事も、世間体も、家族とかなんか知らないその他諸々に対する後ろめたさもどうでもいい。顔がいい男がいる。顔がいい男が私に笑いかけている。私は顔がいい男に金を払う。それだけでいい。それでいい。
街コンやら合コンやらで会った男のくそつまらない話に付き合うことも、ほぼ初対面の男相手に2時間愛想笑いを続けることも、どうでもいい。今、この瞬間、顔がいい男とツーショを撮っている。この時間が最高。
親戚からの面倒くさい話を「いい人がいたら紹介してくださいよ~」と適当にはぐらかすことも、彼氏がいないことにたいして言い訳のように「仕事が忙しくて」と嘘をつくことも、友人の恋話に「羨ましいな~」と相槌をうつこともどうでもいい。顔がいい男を目の前にすると何かもうどうでもよかった。
独身OLで彼氏も好きな人もいなくて、仕事が充実してなくて、趣味も特になくて、ただ毎日を過ごしている。それでもいいじゃん。それでもいい。顔がいい男とツーショを撮れるだけの経済力と体力と普通程度の外見があればそれでいいや。
ありがとう顔がいい男よ。ありがとう。
自分の顔のよさを自覚して、若手俳優という職業を選択してくれてありがとう。